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死刑制度に関する世論調査の問題

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05最高裁
最高裁判所


「死刑もやむを得ない」は「死刑支持」なのか

 死刑制度に関しては従来5年ごとに世論調査が行われており、前回の調査は2014年(平成26)に実施された。それによると、調査該当者1,826人のうち「死刑は廃止するべきである」9.7%、「分らない・一概に言えない」9.8%、「死刑もやむを得ない」80.3%(内閣府大臣官房広報室報告)という結果となっている。
 「死刑は廃止するべきである」という選択肢に対応するのは「死刑は存続させるべきである」のはずであり、死刑に対する否定的ニュアンスを含む「やむを得ない」という選択を死刑容認と数えるのは意識調査として不適切である。殺人刑を積極的に支持するのは抵抗があるだろうという調査側の認識があるとすれば、尚更それを緩和するような内容を死刑容認の選択肢にするのは問題があるだろう。



世論調査の結果は設問の仕方で変わる

 ところがその五年前2009年の調査はもっとひどかった。選択肢は「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」「場合によっては死刑もやむを得ない」「わからない・一概に言えない」であった。「どんな場合でも死刑は廃止か」と言われれば、回答者は特に許しがたい凶悪犯の事件を想起するだろう。そして「場合によっては死刑もやむを得ない」と問われても、やはり回答者は同様の事件を想起するはずだ。死刑制度は特別な事例だけ「場合によって」適用されるのではなく、死刑に該当する要件を満たし、本人に責任を問えると司法が判断する犯行者全てに一律に適用される。極端に言えば本人が無実であってもそれを司法が認めない限り、適用されるのだ。そういう様々な側面を持った死刑制度に対する考えを問うはずの世論調査で、回答者を誘導するようなこのやり方を、政府は1994年(平成6)の調査以来五度繰り返した。1994年の調査では「死刑容認」が70%を超えて73.8%となり、その後年々増加して2009年には85.6%にまでなった。これに対して日本弁護士連合会が2013年、意見書を提出し、「政府は、世論調査の結果を根拠に、国民の大半が死刑制度に賛成していると主張してきた。報道機関も、世論調査の手法・分析結果に問題意識を持つことなく、政府の主張をそのまま報道してきた」と批判した。これをうけた2014年の調査では、選択肢の文面を若干手直ししただけで、特に社会状況の変化が伺われないにもかかわらず、「死刑容認」選択の比率は5%も下がっている。



1980年以降の「変化」

 その前1989年までの選択肢も、「どんな場合でも死刑を廃止しようという意見に賛成か・反対か」という分りにくいものだった。ただし1980年までは、「重い罪を犯した者でも実際に死刑にしないほうがよいと思うか」という設問があり、1980年の調査では25%が「なるべく死刑にしないほうがよい」と回答している。ところがそれまで5年ごとに行っていた調査が次は1989年まで9年間なく、89年の調査ではこの「重い罪を犯した者でも・・・」の設問がなくなり、かわって「凶悪な犯罪は増えているか」「死刑をなくすと悪質な犯罪が増えるか」という個々人の「主観」を問うにすぎない設問でたたみかけた後に「どんな場合でも死刑を廃止しようという意見に賛成か反対か」と訊く明らかな「印象操作」を行い、国会質問でも問題にされたのだった。

一覧表-2



「世論調査」か、「世論操作」か?

 1980年からの9年間のブランクのあと、89年のサブクエスチョンによる「凶悪な犯罪は増えているか」云々という誘導、そして94年の設問変更。死刑にどちらかと言えば否定的な人も「場合によっては」というかたちで「死刑容認」に数えられ、そう報道され、それが繰返され、以降調査結果は累進的に「死刑容認」を増幅させてきたのだった。つまり、元来「死刑廃止に賛成か反対か」を調べるためだったはずの世論調査が、死刑廃止運動が盛り上った80年代以降、「死刑存続を如何に正当化するか」という「世論操作」に切り替わったという印象をぬぐい切れないのである。



「将来」の存置・廃止は拮抗している

 見方を変えてみよう。マスコミでは殆んど取り上げられないが、「将来はどうするか」という設問は、一貫して存在している。「死刑容認」が70%を越えた1994年は、「場合によっては死刑やむなし」の回答者(全体の73.8%)の53.2%が「将来も死刑存続」、7.2%が「わからない」、39.6%が「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」であり、これを全体の%に換算すると、それぞれ39.3%,5.3%.29.2%になる。このうち「将来も存置」は73.8%から「将来は廃止」の29.2%を差し引いた44.6%、これに対して「将来を含めた廃止」は13.6%に29.2%を加えた42.8%である。将来も存置か・廃止かを比べると、<44.6%対42.8%>でほぼ拮抗していた。同じように計算すると「将来にわたって死刑存置か・廃止か」は表のようになる。将来の死刑制度のあり方に対する国民の基本的な感覚は14年前とそう変わっておらず、しかも想像以上に拮抗していることがわかる。

02表


1980年以降のこの動きをグラフにしてみよう。1980年以降明らかに死刑廃止への関心の高まりが感じられる。1999年以降調査の問題性も含めて“巻き返し”がなされているが、関心は依然として衰えてはいないと感じるのである。

01グラフ



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